非凡の人

腹が立つのには。当然のりゆうがあるだろう。
理由もなしに腹をたてるのは狂気のさたである。

理由があって腹が立つのは普通の人。理由があって
も腹を立てないのが非凡の人。かくありたし。

いかりをばしづむる時は世の海の
波風とてもいとはざりけり

心には怒りと喜びあるとても
深くたしなみ色に出すな

いかに荒れていても気にしない(「怒り」と「掟」
をかけている)

武士道的一日一言
新渡戸 稲造 著

10月14日

戊申詔書

明治四十一年(西暦1908年)の今日、戊申詔書が下された。
現在、文明が日々発達し、東西の国々が助け合いながら進歩の恩恵に
あずかっている。益々諸国との交わりを広め、友好関係を深め、
ともに長く発展することを期したいが、めざましい進歩に寄り添って
文明の恩恵にあずかろうとする各方面でゆるんだ箍をしめなおさなければ
ならない。上下心を一心にして、実直、勤勉に仕事に励み、信義をあつく
人情の温かい世となし、華美をつつしみ、質実剛健をむねとし、放蕩や
怠惰を排して角自覚をもって励むべし。

1908年10月13日に発布された明治天皇詔書
日露戦争

10月13日

馬鹿者

人が自分の悪口をいうのを聞いて、自分の至らぬところに気づけば、大きな拾い
物をしたようなものだ。悪口が見当ちがいなら、そんなことを言う者が馬鹿まる
だしということだけのこと。まともに馬鹿者の相手になるのは、その馬鹿者に輪を
かけた馬鹿者である。ただ馬鹿なやつだと憐れんでいればよい。

わがことを謗られつつも其の人に

ふびん加ふる人は仕合(しあはせ)

武士道的一日一言
新渡戸 稲造 著

三徳

三つの徳。/ ①大涅槃に具わる法身・般若・解脱の三徳で、三徳秘密蔵という。一切に具わる真如としての法身と、真理を悟る智恵としての般若と、煩悩の束縛を離れ生死の苦界から脱却した解脱をいう。伊字の三点や摩醯首羅天の三目のように三徳一体とされる。三因仏性によって成就する徳で、正因仏性の果が法身の徳を、了因仏性の果が般若の徳を、縁因仏性の果が解脱の徳を得させる。これを順の三徳という。また、苦を転じて法身の徳を、惑を転じて般若の徳を、業を転じて解脱の徳を得るのを逆の三徳と称する。/ ②仏の三徳としての智徳・断徳・恩徳の三つ。仏が智恵をもって一切をありのままに見通す智徳と、すべての煩悩や惑業を断じ尽くす断徳、そして衆生に恩恵を施す恩徳をいう。/ ③宗祖が釈尊の三徳として示した主・師・親の三つ。主徳は衆生を守護する徳、師徳は衆生を教導する徳、そして親徳は衆生を慈愛する徳をいう。『南条兵衛七郎殿御書』〔13653〕には「我等衆生のためには阿弥陀仏・薬師仏等は主にてはましませども、親と師とにはましまさず。ひとり三徳をかねて恩ふかき仏は釈迦一仏にかぎりたてまつる」と明示されている。また、『開目抄』〔16686〕には「日蓮は日本国の諸人にしうし父母なり」とあり、上行菩薩の自覚を持って妙法を弘宣する日蓮は日本国の衆生にとって三徳を具えた存在であることが明かされている。/ ④食物にある三つの徳。『食物三徳御書』〔26768〕に「食には三の徳あり。一には命をつぎ、二にはいろ(色)をまし、三には力をそう」とあり、生命維持・身体生育・体力増進の三つが示されている。/ ⑤宝珠の三徳で、『三世諸仏総勘文教相廃立』〔27770〕には「珠と光と宝との三徳は只一の珠の徳なるが如し」とあり、相即円融義の説明に用いられている。/ ⑥『小乗大乗分別抄』〔18488〕に見える「雨衆(うず)が三徳」とあるのは、数論外道が仏教の義を盗んで自性に勇・塵・闇の三徳を具えていると主張したことを指す。/ ⇒三徳秘密蔵。

 

日興門流上代事典より転載

苦難

つらいと感じたときには、他の人も
それぞれにつらい思いのあることを
忘れてはならない。天は決して自分
だけに苦を与えるのではない。

自分にあたる風は人にもあたり、自分を
濡らす雨は、他の人をも濡らすのだ。

一筋にこころ定めよ浜千鳥
いづくの浦も波風ぞ立つ

武士道的一日一言
10月3日
新渡戸 稲造 著

親子の愛

安政二年(西暦1855年)の今日、江戸で大地震があり、
その際に藤田東湖は親を思う子の気持ちにまさる
ものは、子を思う親の気持ちだという。

お互いの思いやりがあってこそ、人間は万物の霊長
と称されるにふさわしい。親子の愛は人類の愛の根源である。

明治天皇御製

むらぎもの心つくして報いなむ
おほし立てつる親の恵を
たらねのみ親の教あら玉の
年ふるままに身にぞ沁みける

武士道的一日一言
10月2日
新渡戸 稲造 著

銭使い

天保六年(西暦1835年)の今日、天保銭が鋳造され、
明治三十年(西暦1897年)の今日、金本位制が実施された。

金銭に淡白なのは誰しもほめるが、人からむしり取った
ような金は湯水のように使っても誉めるんいあたいしない。
額に汗して金をかせぐにしろ、義理を欠いてまで貯める

必要はない。

銭金はつかひ捨てる白痴者(たわけもの)

食はずに溜める人も馬鹿者

天保通宝。江戸時代末期から明治時代にかけて
日本で流通した貨幣
国の貨幣制度の基礎を金に置き、金貨を基本的な
通貨とする制度

武士道的一日一言
新渡戸 稲造 著